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ドイツ西部の都市、デュッセルドルフ(Dusseldorf)の地図を拡げながら、これを書いている。デュッセルドルフはライン川の右岸に発達した、人口60万人の行政・経済・文化の中心都市。ドイツ語は読めないが、地図からこの都市の姿がいきいきと感じられる。空港から中心市街地までは約5キロ。ライン川から円弧を描いて緑地が街の中を貫き、3本の吊橋によって対岸とつながる。劇場があり、大学やアカデミーハウスが並ぶ。デュッセルドルフには大企業の本社が集積し、美術館や博物館も多く、芸術の中心地としても知られる。この地図は私のデザイナー駆けだし時代の大阪で開かれた「ドイツ見本市」のような機会に手に入れたと思う。1971年8月の出版と書かれているので、もう35年前のことだ。

デュッセルドルフ市の都市地図
Citymap "Düsseldorf Stadtplan" Cermany
Published by: Amt für Fremdenverkehr und Wirtschaftsförderung der
Landeshauptstadt Düsseldorf, Düsseldorf, Ehrenhof 3
Text: K.H.Hoffmann, Düsseldorf
Cover,Designs and Maps: P.Sachsenmaier, Düsseldorf
Printed by (offset): Express-Druckerei Jean Esser KG , Düsseldorf
Printed in Germany
8.1971
都市の様相は千差万別だ。固有の地形に、人の営みが重なる。都市を構成する建物や構造物はどれ一つ同じ配置はない。地を這う道路や網の目のように延びる鉄道路線、川に架かる橋。歴史や文化に彩られた都市生活者の変遷が、住むまちをカタチづくっていく。自ら住む街とはいえ、都市の規模と機能は脳裏に存在させるに複雑で大きすぎるだろう。都市の利便を享受しようとすれば、これを紙の上に写し取った地図が必須となる。都市機能を情報化し、図形として紙の上に記憶させたものが地図だ。中世の都市地図はまち全体を俯瞰して「絵図」として描いたが、こんにちの都市は眼に見えるものだけでは表すことができない。都市の地下には道路も鉄道も走っている。便利なバスも路線は見えない。都市の密度が増すにつれて、より高度な地図が求められる。地形をどう写し取るかということに加えて、隠れた都市機能をどう顕在化させるかに工夫がいる。
地図は都市の民度をあらわす、といわれている。これには二つの視点があって、ひとつはその都市がもつ文化資産や鉄道・建物などの都市インフラが、別の言い方をすればA地図に置き換える「都市要素」が豊かにあるということ。もう一つは、それらを「地図」という知的情報に置き換える編集者がいて、美しく解りやすいカタチに置き換えるデザイナーや、高度な印刷所があるということ。地図1枚から都市の力、市民のチカラが見えてくるというわけだ。日本のグラフィックデザイナーのレベルは高い。しかし日本の都市地図に、そのデザイン性で見るべきものは少ない。私の場合でいうと、横浜に在ってひとごとでなく、いつか「デュッセルドルフ」にまけない地図をデザインしたいものだ、とずっと願っている。
地図は都市の形や距離を正確にあらわすだけのものでなく、都市の密度・歴史・変化なども読み取るようにできる。また地図を機能性だけでつくることもないだろう。都市のアイデンティティを、その色彩や印刷の体裁、あるいは都市要素をどのような記号体系で作成するかで表出させることもできる。様式化された地図表現が、もう一つの都市の魅力として、観光客にもアピールできる。まだ見ぬ街を地図から想像したり、あるいは訪ねた街の楽しい散策の記憶としても、地図は優れた都市メディアである。「芸術と科学が出合う場」としての都市地図づくりに、各都市に散るグラフィックデザイナーの出番がまたれる。
タイポグラフィックス・ティー 第246号 再録
発行:NPO法人 日本タイポグラフィ協会

ミュンヘン市の鉄道網と料金体系マップ
Tarifplan Gesamtnetz
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